ようこそ ゲストさん [ログイン]


  • 印刷
  • 大
  • 中
  • 小

横尾忠則 美術家

思いつき宣言

由紀さおり

成城の木立に囲まれた
横尾さんのアトリエで
創刊後初めて実現したビッグ対談。
「温泉主義」の著者は、
意外にも温泉嫌い
その謎がしだいに明らかに……
二人の対談は
「いい湯かげんで」続いていった。

木村― 創刊以来、ずっと連載していただきありがとうございます。お世話になっているのに、お目にかかるのははじめてですね。

横尾― そうですよね。でも、もう何度もお目にかかったような感じがするんです。毎回巻頭インタビュー読ませていただいていますから。

木村― 昭和11年のお生まれですよね。ぼくは21年なので、ちょうど10歳上ですね。

横尾― 今年は年男ですけれど、ぼくと同い歳には福田総理と長嶋茂雄さんがいます。

木村― 横尾さんのように元気な方はなかなかいませんね。

横尾― いやいや、そんなに元気じゃないですよ。昔だったら体力を超えたような仕事も引き受けてしまったりしましたけど、いまそれをやるとダメですね。

木村― 温泉旅行記を連載していただいてるんですけど、温泉へ行かれてどうですか。新たな発見とかありましたか。

横尾― いちばん最初に草津温泉に行って、いきなり帯状疱疹の後遺症の神経痛が治ったでしょ。それでまあ驚きましたね。
 毎回、M編集者と行っているんですけど、そのときぼくが思ったのは、これは温泉が目的じゃなくって、神経痛を治すためにMさんがどこからか遣わされてきちゃったなあっ。そういうふうにとらえちゃいましたね。

木村― なるほど、なるほど。

横尾― それも神秘的にとらえるんじゃなくて、もうちょっと日常的にね。

木村― もともとお風呂は、好きなほうですか。

横尾― ぼくはね、一番嫌いなのがお風呂なの。
 風呂というより、当たり前だけど入るときは裸になるのがもう面倒くさくて。風呂から出てくるとまたもう一回着なきゃいけないでしょ。
 とくに温泉場へ行くとね、浴衣に着替えるじゃないですか、面倒くさい、足袋まではかされて。それで、風呂に入るためにまた脱がなきゃいけないでしょ。で、お風呂に3分か5分ぐらい入って、まあ10分……最近はちょっと長くなったけど、また着なきゃいけない。もう面倒くさい、それでまた寝るときにまた脱がなきゃ。もう面倒くさくって。昔なんか、パンツとTシャツを着たままでお風呂に入って、湯船の中で脱いでいました。

木村― そうなんですか。

横尾― うちのかみさんも、それだけはやめなさい、やめてちょうだいって。

木村― それはやめたほうがいいと思いますね。

横尾― だから、風呂がいやというより脱ぐのがほんとに面倒くさくてね。だけど今は、ほとんど毎日9時になると風呂に入っています。4、5日続けて入って、1日休むという感じで。

木村― でも、お湯につかったら気持ちよくないですか。

横尾― カラスの行水、家でも5分くらいで、すぐ出たい。熱いからね。

木村― 我慢して入ってるんですか。

横尾― 特に温泉で熱いお湯があるんです。その熱さにやっと慣れてきたと思ったら、出る。

木村― でも、普通は温泉へ行くというとそれが目的じゃないですかね。

横尾― Mさんなんかね、温泉にかなりなじんだ雰囲気ですよ。ぼくはぜんぜんなじまない、いつなじむのかなと思うんだけど。

木村― へえぇ。