石田えり

対談 島根を語る 澄田信義

石田 えり
いしだ えり
(女優)
熊本県八代市生まれ。昭和53年、映画「翼は心につけて」でデビュー。3年後、映画「遠雷」のヒロイン役で日本アカデミー賞優秀主演女優賞と新人俳優賞を受賞。その後映画、TV、舞台などで活躍し、数々の賞に輝く。映画「釣りバカ日誌」シリーズでは毎作品、主人公の妻みち子を好演。
澄田 信義
すみた のぶよし
(島根県知事)
島根県出雲市出身。東京大学法学部卒。和歌山県警察本部長、日本国有鉄道常務理事を経て、昭和62年より現職。現在2期目。


人々の温かさと美しい風景に感動
知事 石田さんは、映画「釣りバカ日誌・スペシャル」の撮影で、5月に松江や出雲大社などに初めていらっしゃったそうですが、島根の印象はいかがですか。
石田 とにかく、ロケの現地で出会った人たちがみんな親切で協力的でしたね。仕事以外の面でもいろいろと良くしてくださって、とても感動しました。
知事 そうですか。それは良かった。天候の方はいかがでしたか。
石田 ロケの間ずっと良いお天気で、スタッフ一同、『こんなにラッキーなら、映画もきっと成功するに違いない』と喜んでいました。
知事 島根県は5月頃から日本海も穏やかになり、天候も安定してくるんですよ。映画の中に出てくる隠岐の国賀海岸や松江の宍道湖など、とても美しく映っていましたね。この映画で、島根は明るくて美しいところだということがわかっていただけると思いました。
石田 そうでしょうね。例えば日本海というと、荒涼としたイメージがあって私は好きなんですが、荒々しさと穏やかさの両方を併せ持っているところがいいですね。
知事 今回、特に力を入れた点などはありましたか。
石田 この「釣りバカ日誌」シリーズはとてもヒットしている作品ですが、私自身はシリーズだとは思わず、一本一本常に新しい気持ちで取り組むようにしています。普通の奥さんをどう演じたらよいのか、今回いろいろ悩むこともありましたが、島根の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、温かい人情に触れながらスタートを切れたことで、ものすごく助けられたような気がします。感謝しています。
知事 それは良かった。またストーリーも面白い。奥さんのみち子さんの実家が大社町ということで、とても親しみを感じますよ。しかも、けんかをして実家に帰ったけれども、縁結びの神様の出雲大社でハマちゃんと再び結ばれるというのがいい。
石田 出雲大社でもロケがあったんですが、素晴らしい拝殿ですね。参拝のシーンではやはり地元の人たちが協力してくださって。
知事 出雲大社は拝み方が独特で、二礼四拍です。
石田 ええ、しっかりリハーサルをしました。

島根の名産に舌鼓を打って
石田 ロケのときは結構空き時間も多かったので、足立美術館の日本庭園に行ったり、おいしいものを食べたりしたんですよ。出雲そばもいただきました。
知事 こちらのそばはいかがですか。
石田 私、大好きです。今まで名前は聞いていたんですが、食べたのは初めてです。腰が強くて、そばの風味がいいですね。
知事 出雲そばはソバの実の皮を一緒にひくんです。それで色が濃く、風味も豊かなんですよ。
石田 そうですか。また、お茶が盛んだそうですね。
知事 江戸時代、松江に松平不昧公(まつだいらふまいこう)という文化を愛好し育てたお殿様がいらして、その頃から茶の湯が盛んになったんです。ですから和菓子もおいしいですよ。石田さんはお酒のほうはいかがですか。
石田 はい。強いですよ。(笑)
知事 それは頼もしい。島根は日本酒がうまい。特に大吟醸。きれいな水があり、いい米が出来ますからね。
石田 ええ、いただきました。とてもおいしかったです。そしてワインも。
知事 出雲大社の辺りはブドウの産地でして島根ワインの工場もありますよ。
石田 いろいろな特産があるんですね。
知事 ほかにもメロンに柿、ワサビ。江の川や高津川のアユ。そして島根和牛は全国でも引けを取りませんよ。ですから、海、湖、川、山それぞれの特色を生かした特産が県内各地にあり、春夏秋冬、豊かな自然の恵みを受けたいろいろな味が楽しめる。これは自慢できる点ですね。
石田 そういえば宍道湖のロケでは、水に腰まで入りました。ここでは何がとれるんですか。
知事 宍道湖は海水と真水が混ざる汽水湖で塩分は海水の10分の1ほどです。そのため魚種も豊富で、「宍道湖七珍」といって、シジミ、エビ、コイ、シラウオ、ウナギ、ワカサギ、スズキの郷土料理があり、特に冬にかけては格別ですよ。

近くなった島根
知事 島根県はとても細長い県でしてね。かつて西の方は石見の国、東の方は出雲の国、そして本土から離れた隠岐島は隠岐の国でした。この3つの国が一緒になり島根県が出来たんです。その石見地方にも、なかなか良い所がありましてね。
石田 そうですか。
知事 たとえば津和野。ここは鎌倉時代からの城下町で、もりおうがいや西周(にしあまね)の出身地としても有名です。城下町の風情を今に残しており、観光客も多いですよ。昨年7月には、出雲、隠岐に次ぐ県内3つ目の空港として石見(いわみ)空港が開港し、東京や大阪がますます近くなりました。
石田 私も仕事柄いろいろな所へ行きますが結構、旅が好きなんです。
知事 やはり仕事とプライベートでは違うでしょう。
石田 そうですね。旅は景色を楽しんだりするのももちろんですが、そこに住んでいる人たちと触れ合ったりすることが思い出になるわけで、仕事ではロケ地の地元の人たちと知り合えたりすることがいいですね。
知事 そういう意味では、今回はまた新しい出会いがあったのではないですか。
石田 ええ。それぞれのロケ地で、いろいろな人たちと話ができました。隠岐にも随分速く行くことができるんですね。
知事 隠岐には昨年4月から世界で初めてのディーゼルエンジンによる水中翼の超高速船「レインボー」が運航していまして、美保関町の七類から約1時間で行くことができます。
石田 思ったよりずっと近いですよね。
知事 そうです。また空港を利用すれば、出雲からですと、わずか30分です。細長く、離島もある島根県ですが、高速交通網が着々と整備されつつあるんです。

住みやすい地域の発展をめざして
石田 地元の人は便利になった交通網を利用して、海や川、山でレジャーが楽しめますね。
知事 釣り好きな人は楽しんでいるようです。
石田 うらやましい。
知事 ところが、そうした良い条件下にありながら、若者は都会に憧れますね。
石田 無い物ねだりですね。(笑)
知事 都会に住んでみて、やはり生まれ故郷はいいと気が付いてUターンしてくる若者もいます。
石田 私は熊本の八代の出身ですが、ふるさとにはいつもやさしい風が吹いていて欲しいと願っています。住んでいる人も時代も変わっていくのですから、本当に住みやすいということはどういうことなのかをよく考えた発展の仕方をしていってほしいと思いますね。
知事 確かにそうですね。近年人口が減り、若者が都会の大学へ行ったり都会で就職する。そうすると地方の活力がだんだん失われていく。島根のみならず、全国各地でそうした傾向が見受けられます。島根県でも、若者が地域にとどまれるように空港や高速道路の整備、企業誘致、あるいは大学の設置など定住対策を進めているところです。しかし、そのために良さが失われてはいけない。
石田 素晴らしい自然とか、人情、そういった住みやすさを失わず、いいものを残しながら発展することは難しいことですが、その気持ちが大切だと思います。
知事 そうそう、「釣りバカ日誌」のみち子さんも出雲大社の土産物屋が実家なんだから、石田さんにもぜひ、島根のファンになっていただきたい。
石田 それはもう、最初に来たときから。島根で映画の試写会があると聞いて、心からもう一度行きたいと思いました。今度は冬に来ようかなと思っています。荒々しい日本海を見ながら、おいしい魚をいただきたいですね。
知事 ぜひ、来てください。今日は本当にありがとうございました。これからもご活躍を。
石田 ありがとうございました。

対談風景

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