紅葉最盛期の十和田湖へ 03年3月末路線廃止
ジェイアールバス東北・十和田南線(十和田南駅−十和田湖)
 /秋田県鹿角市・鹿角郡小坂町・青森県上北郡十和田湖町
048/2002.10.20乗車
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 「ハイ、そうすれば、まもなく花輪に到着しま〜す」秋田県北部をエリアとする秋北バスの乗務員は、当地の独特な言い回しで花輪ステーション到着を告げ、車内を一回りする。池袋からの夜行高速バス「ジュピター」号は快調なミッドナイトドライブを続け、ほぼ定刻に秋田県鹿角市、秋北バス花輪ステーションに到着した。すでに夜は明けているものの、重い雲がたちこめており辺りは薄暗い。今日はJRバス東北「十和田南線」に乗って、紅葉真っ盛りの十和田湖へ向かう予定なのだが、こんな空模様ではイマイチ気勢があがらない。雨だけは勘弁と、空を見上げながらJR花輪線「鹿角花輪」駅へ歩いた。この鹿角花輪駅から大館方へ2駅、「十和田南」駅がJRバスの出発点である。昔は鹿角花輪駅(当時は陸中花輪駅)からも大湯温泉方面へJRバスが発着していたが、廃止になってしまった。あと1ヵ月ちょっとで快速格下げになる急行「陸中」で十和田南へと移動。とはいっても、花輪線内は普通列車なので乗車券だけで乗れる。車両は古いが、車内は特急並みのリクライニングシートに取り替えられているので乗りドクな列車だ。リクライニングに寛ぐ間もなく、十数分でスイッチパック式の十和田南駅へ到着、他に旅行者風の男性がひとり改札へと向かっていた。

 気温10℃も満たない今日は、この秋一番の冷え込みだそうで、ガランとした駅の待合室もうすら寒い。駅前には2〜3台の客待タクシーがいる他は人気もなくし〜んとしている。左手にはJRバスの営業所があり、数台のバスが休んでいる。駅に併設されていたバスの切符売場は閉鎖されていた。お目当ての7:57発十和田湖行「とわだこ」号がのりばに横付けされたので、さっきの男性と共に乗り込む。しばらくして上り列車が到着し、こちらからも数人の旅行者が乗り込んできた。5人の旅行客を乗せてバスは発車、以前のように十和田湖観光の玄関駅として賑わった頃の面影はないが、それでもなんとか有名観光地接続バスの体面は保ったような感じがする。


◆JRバス大湯温泉駅。

 駅を出て約4分、「毛馬内町」で地元のお客が数人乗り込んできた。ガランとした車内を想像していたので、正直驚く。ちなみに全国版の時刻表からは読み取れないが、十和田湖まで行く便以外にも、区間便が数本設定されこうした地元客や通学客にも対応している。今乗っているバスは観光タイプの車両だが、さきほど十和田南で車庫をのぞいてみると、普通の路線車の姿も見えた。国道103号を北上し、大湯川を渡ってまもなく、大湯温泉の町へと入ってゆく。町の中心にある「大湯温泉駅」は今や貴重となったバスの駅だ。ここで一度途中下車してみる。目的はもちろん、一浴びだ。入れ替わりにご婦人の観光グループが乗り込んでゆく。ここで一泊して今日はこれから十和田湖観光という段取りだろう。路線バスを使って旅をしてくれるというのが嬉しい。

 コイン精米所が併設されている大湯温泉駅は、入口が施錠されカーテンが掛かって中へ入れない。理由は書いてないけど何やら今日まで締め切りとの貼り紙があった。仕方ないので、まもなくやってくる十和田湖駅行のバスを撮影し、それからあらかじめ調べておいた共同浴場へ向かう。バス停2〜3コ分、温泉街のはずれに共同浴場「荒瀬の湯」はあって、駅から徒歩6〜7分といったところ。大湯川の川べりにあるのだが、すぐ近くに架かる「大湯新橋」から建物を確認しないと、たどり着くのに苦労する。「荒瀬の湯」は、三つある共同湯のひとつで実用本位の実に簡素な造りの浴場だ。120円の入浴券を購入して浴室へ入ると、地元のお年寄りらが朝の入浴を楽しんでいた。月並みな言い方をすれば、ここは社交場にもなっている。ちょっと失礼して隙間から湯船に足をつけるととんでもなく熱かった。今日は外が寒いせいもあるだろうが、とても一気に湯船に入ることはできない。しばらく足を出し入れしてようやく全身を浸けることができたが、それでも3分が限界だった。とはいえ、たった3分浸かっていただけでも真からポカポカといった感じで、寒空の下を駅まで歩いて戻る途中も、湯冷めすることはなかった。

◆↑湖岸を走る国道を行く。
◆↓この小さな川「神田川」が県境。右が秋田県鹿角郡小坂町、左が青森県上北郡十和田湖町
 待合室が使えないので、駅の前で次のバスを待つ。他に用務客風の男性がひとり同じバスを待っていた。今日2便目の十和田湖行は定刻に姿を現す。前しか出入口がない観光タイプのバスなので、下車客が降りるのを待つ。2〜3人の下車客と入れ替わりに車内へ入ると、朝イチの便よりも増して観光客の姿が目立ち、まずまずの乗り具合。バスはさっきの大湯新橋で大湯川を渡り国道103号を更に北上する。地元の人も何人か乗っていたようで、沿線の集落で降りてゆく。紅葉した木々の中に忽然と姿を現した歴史のありそうな建物は、同和鉱業の発電所でそばを流れる大湯川の水利を利用して自社の電力をまかなっているようだ。「中滝」は鹿角市域北限の集落で、ここで折り返す便もある。そして冬季はこれより先は1日1往復まで減便され、観光・生活両方の役割を持った路線はここからほぼ完全な観光路線バスの姿となる。ここでしばらく時間調整をしたのち「中滝」を発車。「上り坂のためエンジン音が高くなります」と一風変ったテープ案内が流れると、違わずエンジンが一段と高い唸りをあげ、発荷峠に通じる上り坂を登りはじめた。森の中をぐんぐん進み、鹿角市域から小坂町にはいった頃「発荷峠」の展望台に到着。駐車場は一般車であふれかえる。そして眼下には素晴らしい十和田湖の全景が映った。「晴れていれば、前方に八甲田の山並みが見えるのですが…今日は残念です」運転士は残念そうに言って、バスを少しずつ移動させ、全部の席の人が写真を撮りやすいように配慮してくれる。テープが流す観光ガイドを聞きながら一気に峠を下って「和井内」から湖を周回している道へ出た。湖面に沿ってしばらく走るとも十和田湖観光の拠点、「休屋」の町が見えてくる。バスは幅数メートルの川を渡って青森県へ入り、ほどなく十和田湖駅に到着した。

 紅葉シーズン真っ只中の休日とあって、大変な賑わいだ。観光バスも続々と到着して、団体客を吐き出している。十和田湖は初めて来る場所だったのでとりあえず有名な「乙女の像」を見に行った。土産物屋の軒先を通り抜け、砂浜をしばらく歩くと有名な少女の裸像が建っている広場に出る。十和田湖のシンボル「乙女の像」だ。記念撮影をする人の姿が絶えない。湖面から鬱蒼とした杉林の中へ入り、十和田神社の境内を歩いてハズーターミナルの方へと戻る。JRバス十和田湖駅の向かい側には、JRバス以外の路線が発着しているターミナルがある。古めかしい建物で土産物屋やレストランなどが入っているのだが、ここを発着する路線の多くが休止や廃止になっており、十和田市から1往復の十和田観光電鉄のバスと、かつて秋北バスが運行し現在は十和田タクシーが運行する十和田湖〜八幡平線があるにすぎない。バス案内所は閉鎖状態だった。ひととおり付近を散策したあと、その十和田タクシーのバスに乗って発荷峠へ行ってみる。中型観光バスを使用し女性の車掌が乗っていた。子午前中よりも人もクルマも少なくなっていた発荷峠の展望台へあがると、眼下に湖面が広がる。これで天気が良ければ背後に八甲田の山並みが望め、最盛期を迎えた木々の紅葉も美しく映えて青い湖面と見事なコントラストを見せてくれるはずなのだが…あいにく雨こそ降らないものの、濃い雲が立ち込め、湖の向こう側は霞んでしまっている。ここで十和田南駅行最終バスを待っていてもよいのだが、こんな天気だし気温も下がってきたので、すぐに来たJRバスで再び休屋へ戻る。ゆきに乗ったバスと同じにこやかな運転士さんで、「今日は残念ですねー」と声をかけてくれた。この時間から湖へ訪れる観光客なんているはずもなく、車内は無人だった。このバスが折り返して十和田南駅行終車になるのかとおもったら、盛岡駅からやってくる「高速とわだこ号」が16:15にここに到着し、その折り返しとなるようで、今乗ってきたバスは運転士共々、今夜はここに泊まりで、明日朝の初便に備えるようだ。

 5〜6人を乗せた十和田南駅行は、すっかり陽の落ちた山道をひたすら下ってゆく。途中乗降もほとんどなく、夜行バスのような雰囲気だ。かつて大勢の観光客を続行便を連ねて運んだ十和田南線も、2003年3月での廃止が決まっており、中滝までの生活路線区間ではどのような代替が確保されるのか気になるところである。観光路線の使命は、盛岡駅からの高速バスや、東北新幹線八戸延長にあわせて開業した、八戸駅〜十和田湖線が担ってゆくだろう。



◆十和田湖
 秋田・青森の県境付近に豊かな水をたたえる「十和田湖」は、今から約1万3千年前という気の遠くなるような大昔に、一帯の火山噴火による陥没地に水が溜まって出来た、いわゆる「カルデラ湖」で、深い森の中に神秘的な深いブルーの湖面が大変印象的です。湖面標高約400メートル、水深326.8メートル、周囲44キロ、湖の面積は59.8平方キロメートルあります。湖の南側には二つの突き出た、湖では珍しい「半島」があって、それぞれ西側から中山半島、御倉半島と呼ばれています。湖岸最大の集落「休屋」は、その中山半島の付け根付近にあり、路線バスや遊覧船の発着場、ホテル・旅館や土産物屋が多数建ち並ぶなど、十和田湖観光の拠点ともなっています。JRバス十和田湖駅も、この休屋にあります。休屋から湖岸沿いを約5分、半島に向かって歩いた所に有名な「乙女の像」があり、そこから深い杉林の中の遊歩道を歩いてゆくと、「十和田神社」があります。
最寄バス停…十和田湖駅。


◆発荷峠
 JRバス十和田南線に乗って、一番最初に湖を見ることができるのが、この「発荷峠」です。「中滝」を過ぎてからひたすら森の中を登って来たバスは、突然目の前が開けた標高631メートルの高台に出ます。そして眼下に紺碧の湖、その後方には外輪山、八甲田の山々が見渡せ、その眺めは十和田湖一と言われています。
最寄バス停…発荷峠。


◆十和田大湯温泉
 十和田湖観光至近の温泉地として人気が高い自然湧出の温泉場です。大湯川沿いにホテル・旅館が点在し、4軒の共同浴場もあります。町の中心には大湯温泉総合新興プラザがあって、様々な観光情報を入手することが可能です。
最寄バス停…大湯温泉駅ほか。


←荒瀬の湯共同浴場についてはこちら。
*写真をクリックすると拡大します*



◆乙女の像◆



◆十和田神社◆



◆発荷峠から望む(天気悪い…)


 2003年3月末日を持って廃止になりました。鹿角市内から十和田湖方面へは「十和田タクシー」の路線バスを利用することになりますが、本数と運行期間が限られています。


 ★鹿角市公式HP http://www.city.kazuno.akita.jp/
 ★小坂町公式HP http://www.town.kosaka.akita.jp/
 ★十和田湖町公式HP http://www.net.pref.aomori.jp/towadako/town/home1.htm
 ★大湯温泉観光協会HP http://www.ink.or.jp/~o-yu/index.html
 ★十和田国立公園総合案内所 http://www.towadako.or.jp/
   十和田湖方面の各路線バスのダイヤを掲載しています。

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