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 陶磁器、海をゆく 「物」が語る海の交流史 Z会ペブル選書13
佐々木達夫 著
増進会出版社 刊
B5判 238頁
価格945円(税込み)
1999年11月1日発行
小野公久 〈朝日新聞文化事業部企画委員〉
著者は東西文化交流史と東洋考古学の研究者で、現在、金沢大教授。ペルシャ湾に面するアラビア半島のアラブ首長国連邦・ジュルファル遺跡などの発掘調査を、長年にわたって手掛けて来られた、この分野での第一人者の一人である。
海上交易によって、古来様々な物資が運ばれたのは間違いないし、稀にはその実態が記録に残されることもある。例えばオランダ・ハーグ市にある国立公文書館には、17世紀以降、オランダ東インド会社が東洋各地に派遣した商館長らが本国に送った報告文書や日記が、膨大な貿易の記録として保存されている。しかしこれらは例外中の例外であって、普通はまず記録は残らないし、遺物の多くも歳月とともに朽ち果ててしまうだろう。
遺物の中で、比較的残りの良いのが陶磁器である。船からの荷降ろしや積み込み時に割れた品は港に遺棄されるだろうし、壊れた家庭の食器などはゴミとして捨てられる。世界的陶磁学者だった小山冨士夫らは、エジプト・フスタート遺跡のゴミ捨て場から出土した大量の陶磁器を1964年に調査しているが、これが日本人研究者としての先駆的研究だろう。佐々木氏の今回の著作によって、近年の調査がより精密、多角的な視点で行われるようになっている実態がよく理解できる。また発掘許可を得るための現地政府との折衝の難しさや地元での出土品の保存・展示の状況、外国の研究者への情報公開の実情なども良く分かって面白い。
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古陶磁真贋鑑定と鑑賞
出川直樹 著
講談社 刊
A5判変型 424頁
価格6,000円(税込み)
2005年2月22日発行
森 孝一 〈日本陶磁協会主任研究員〉
このたび、工芸研究家で、古陶磁学者である出川直樹氏が、『古陶磁真贋鑑定と鑑賞』という書き下しの本を出版された。出川氏は、これまでも『やきもの真贋と鑑定』(平凡社)や『やきもの鑑賞入門』『やきもの鑑定入門』(新潮社)という類書を刊行してこられたが、本書は、それらをしのぐ著書渾身の大著である。
出川氏は、本書の巻頭で、「現代陶芸と違い、古陶磁には経年変化があり、損傷・修理があり、さらに贋作という存在がからんでくる。これらを追求していかなければ、真の古陶磁の姿は捉えられない。これが本書の基本的な立場でる。」と語っておられるが、この基本にのっとり、鑑定編・蒐集編・鑑賞編の三編に分けて、従来の陶磁の本にはなかったまったく新しい視点から、科学的分析による独創的なアプローチで論述されている。
たとえば、鑑定編では、焼成実験により「二度窯」「後絵」を再現し、その見分け方を具体的に示し、贋作特有の「人工風化」「古色付け」を比較し、その真の姿を追求している。また、鑑賞編では、これまでの心情に溺れた感傷的な鑑賞法を排し、事実に即したスケールの大きな創造的な鑑賞論を提唱している。
本書は、日本、中国、朝鮮半島、東南アジア各国の古陶磁の名品や真作、贋作(こんなに贋作を掲載した本は、いまかってない)などの写真500余点、イラスト100余点を収載して、入門者から上級者まで分かりやすい解説で構成している。まさに、古陶磁愛好家必携の書であろう。
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奇人と異才の中国史
井波律子 著
岩波新書 刊
新書判・並製 222頁
価格735円(税込み)
2005年2月18日発行
榎本 徹 〈岐阜県現代陶芸美術館 館長〉
中国には古来「陶をもって政を見る」ということばがある。その時代につくられたやきものを見ると、その時代の政(まつりごと)がわかるという意味だそうだが、やはり中国の陶磁器を知るためには、その歴史を見なければならないのはいうまでもないことだろう。
今回紹介するのは、その中国の歴史を56人の人物を通してみてみようという試みである。孔子から魯迅まで、まことに多彩な人物が選ばれており、きわめてユニークな中国通史となっている。以前この著者の訳で、『三国志』を読んだのであるが、わかりやすく、こなれた訳で、一気に読み終えた記憶がある。この本もひとりの人物に、新書版で3ページしか文字数はないのだが、生い立ちから時代との関わりまで簡潔にまとめられており、さらには各人物の末尾にその本人の文章や作品が載せられ、まことに手際のいい仕上がりである。
内容的に見ると、全体的にいわゆる体制をつくりそれを動かした人よりも、世に入れられなかった人に対する著者の共感が色濃くうかがえて、歴史に翻弄された人たちが多く取り上げられているような気がする。そのため、時代の変わり目に生きた人たち、とくに明末清初の人物たちなどに生彩を感じるのは、私の思いこみなのであろうか。
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