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豊田 哲也(徳島大)
Tetsuya TOYODA ( Tokushima Univ.)
キーワード:世界都市、階層分極化、職業構成、所得分布、東京
Keywords:Global City, Class Polarization, Ocupational Segregation, Income Distribution, Tokyo
- 分極化の概念
世界都市仮説群の中でも階層分極化の問題は1980年代以降大きな反響を呼んできた。すなわち、製造業の衰退が熟練労働の縮小と中間層の没落をもたらす一方で、成長産業によって大量に創出された雇用は、高所得のビジネスエリートと低所得の未熟練サービス職の両極端に偏る傾向が強いと主張される。しかし、社会学者による階級論的な色彩の強い分極化の把握内容と、インナーシティ問題とジェントリフィケーションの併存に注目する地理学者による議論との間には、分極化をめぐる概念の混乱があると思われる。ここでは、「垂直的構造の階層分極化」と「空間的構造の階層分極化」を区別して考えたい。その上で両者が都市の空間構造とどうかかわるのか、バブル期前後の東京特別区を例に職業構成と所得分布から検証をおこなう。
- 職業構成からみた分極化
1980〜95年の国勢調査の職業別・産業別就業者数を利用し、職業構成と居住地の空間的パターンにどのような変化があったかを調べる。5区分からなる職種分類を独自に設定し、就業者総数に占める構成比と首都圏1都3県をベースとする特化係数を求めた。
区部全体で見ると、「専門・管理職」はこの間に11.8万人増加し構成比も上昇したが、首都圏での伸び率はさらに大きく、相対的には郊外への分散が進んだ。「事務職」「販売・サービス職」も同様な傾向を示す。ブルーカラーでは、生産部門の「建設・製造職」が減少しているのに対して、サービス部門の「現業職」は増加しており、雇用および就業の構造的変化が読みとれる。
次に職種別に空間的な居住パターンを見ると、西部にホワイトカラー、東部にブルーカラーがそれぞれ集中しているという意味で、セクター間で空間的に分極化した状態が続いているが、概してその差は緩和され平準化する傾向にある。これとは逆に、都心では大幅な人口減少の中でホワイトカラーの構成比が高まり、都心対周辺を軸として空間的な分極化が強まった。
- 所得分布からみた分極化
所得の分極化を検証するためには、居住者の所得総額や人口当たり平均値だけでは不十分である。ここでは階層別の動向を表す地域データとして住宅統計の「世帯の収入」を用い、首都圏の合計値をもとに第1五分位点と第4五分位点を推計した。上位20%を高所得層、下位20%を低所得層と定義し、それぞれの世帯数が占める構成比を区別に求め地図化して示す。
区部全体では低所得層が約25%、高所得層が約19%で、景気変動に関わりなく比較的安定的に推移している。1983〜93年の間に中所得層は微増しており、垂直的分極化の進行という仮説は該当しない。むしろ、所得分布には空間的な格差が顕著に認められる。千代田区の40%を頂点に都心では高所得層が多く、この突出傾向は10年間で強化された。これと対照的に、新宿区・豊島区など副都心とその周辺部では低所得層の集中地域が明瞭な形をとって現れてきた。西部各区では高所得層と低所得層が多いが、所得分布は平均化する方向にある。中所得層の多い東部では、ベイエリアで高所得層が増加している。
- 結 論
1980年代以降の東京を全体として捉える限り、専門的ホワイトカラーと未熟練ブルーカラー、あるいは富裕層と貧困層へという垂直的構造の分極化は生じていないが、空間的に見ると先鋭な分極化と平準化が異なる空間パターンにおいて同時に進行していると言える。
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