「釉薬工房」で学ぼう あい工房
番外 Vol.00 とにかく釉薬レシピを作る 04/09/20更新
「釉薬工房」では、釉薬やその原料についての知識なしでも、レシピが作れます。ここでは、コンピュータ上で話をしますので、調合時、覚えておくべき安全上の注意等は割愛させていただきます。
・調合の流れ
調合は、以下の流れで行います。
原料の選択(基礎釉の作成) → バランスの調整 → 着色剤の追加
・作業1 原料の選択
「釉薬工房」では、上の図のような原料が予め登録されています。上の図は、原料の「名称一覧」を押すと表示されます。上にある分類をクリックすると、その分類の原料のみが表示されます。最初にすることは、分類の、左4つ(アルカリ中心、アルミナ中心、シリカ中心、長石)を混ぜあわせることです。ここでは、それぞれの分類の原料が、どのような働きをするかを覚える必要はありません。サンプルとして、以下手順で原料を10gずつ選択してみます。すると、グラフ上に、右図のような点が表示されます。選択する原料の種類については、こちらでよくあるものを書いていますので、そちらと変えてみるのもよいでしょう。それ以外のものを使う場合は、アルカリの種類と意味などが関係してきます。このようにして作った無色の釉薬を、ここでは「基礎釉」と呼びます。
分類 アルカリ中心 アルミナ中心 シリカ中心 長石
原料 合成土灰 韓国カオリン 福島珪石 福島長石
重量 10 g 10 g 10 g 10 g

左の4つを10gずつ混ぜた時のグラフ
1. 「新しい釉薬」ボタンで入力状態にします。
2. 「追加する原料」から"合成土灰"を選択します。
3. 「追加する重量」に10を入力してEnterを押します。
4. 2.に戻って、韓国カオリン、福島珪石、福島長石も同様に追加します。
5. 「釉薬名」に"テスト釉1"と入力します。
6. 「登録」ボタンで入力を終了します。
・グラフの点の意味
グラフの点の位置で、釉薬の溶けやツヤ、乳濁などの推測ができます。2つの値のバランスがよい位置(左下と右上を結ぶ線上)では、透明でツヤありになりやすく、どちらかに傾く(右下や左上に寄る)とマット調になったり、乳濁したりします。また、左下ほど溶けやすく、右上ほど溶けにくくなる傾向があります。(行きすぎは当然NG)。焼成温度やアルカリ分が変わると、グラフ上での位置が同じでも結果は変わってしまいますが、左図のように、透明釉の場合、いまの位置から、どちらに動くと、どう変化するかの傾向はほとんど同じなので、調合を変更するときには非常に役立ちます。伊羅保のように溶ける釉薬にしたければ、左下に、溶けにくくするのであれば右上に、マット調にしたければバランスを崩すなど、点の位置を見ながら調整ができるので、とても分かりやすく作業ができます。グラフ背景は、焼成温度やパターンが違うと変わってしまうので、あくまで参考程度と考えてください。(自分で作ることもできます。)
・作業2 バランスの調整を行う
上の例の点の位置では、1230℃くらいで焼成する場合、透明釉にならないかもしれません(焼成パターンによります)。このため、1230℃で透明釉となると思われる点2となるように調整してみます。
1. 上の釉薬を表示した状態で「ゼーゲル式グラフで編集」ボタンを押します。
2. 開いた画面のグラフで点2の位置をクリックします。
以上で、点2の分量が計算されます。どこが透明になる領域か分からなくても、上の解説を踏まえてグラフの点を移動すれば、簡単に調整ができます。結果は以下のとおりです。
原料 合成土灰 韓国カオリン 福島珪石 福島長石
重量 13.2 g 3.2 g 10.4 g 13.2 g
(このとき、もっと左下の方をクリックすると、”計算できません”と表示されますが、左にある「長石類」で福島長石を選択すると、ほとんどの場所で計算できるようになります。)
・原料を選んで調整を行う
なんとなく原料の働きが分かる、また、原料の働きを知りたいという場合は、原料の重量を直接いじってみましょう。この場合は、メイン画面でサンプルを表示した状態で、「釉薬の修正」ボタンを押します。このとき、調合内容の原料をクリックすると、グラフに右図のような赤と青の直線が表示されます。青は、選んだ原料を増やしたとき、赤は減らしたとき、点がどのように移動するかを示しています。右図は合成土灰を選択したものです。グラフの点の意味を考えると、合成土灰を増やすと溶けやすくなることが分かります。つまり、グラフの意味が分かれば、原料をクリックすることで、その働きが分かります。
このとき、右下の▲▼をクリックして、点の位置を調整します(選択した原料が少しずつ増減されます)。
・三角座標で調整を行う
入力した釉薬を表示したまま、「三角座標で編集」ボタンを押すと、三角座標での編集モードになります。三角座標は、原料の割合を変えて、原料の影響を試すときに有効です。右図の場合は、以下のようになります。
頂点 原料 比率 重量
A 福島長石 30 12 g
B 合成土灰 40 16 g
C 福島珪石 10 4 g
D 韓国カオリン 20 8 g

通常、書籍に載っているものは、Dが存在しない三角形のため、常に100の大きさの三角形となります。ここでは、Dの分だけ、三角形が小さくなっています。この三角形の上で、カーソルを動かすと、ABCの値が変化し、今いる場所のABCDの値がわかりますので、三角座標が簡単に使えます。試しに、どこかでクリックすると、そのバランスに変更された調合が表示されます。
・作業3 着色剤を追加する
ここでは色について考えましょう。発色させるためには、基礎釉に着色剤を加えます。着色剤を加える場合は、通常「外割」という形で加えます。これは、基礎釉の重量の何%を加えるか、という形で設定します。加える%は、着色剤の種類によって変わります(右図参照)。結果として、基礎釉100gに5%の着色剤を加えると、105gの釉薬粉末ができあがります。同時に2種類以上加えてもかまいません。
発色の仕方は、加えるアルカリなどによっても変わってきますので、経験が必要になってきます。(釉薬基礎ノートが非常に参考になります。)
金属 名称 発色(代表例)
着色剤例 添加例
(%)
酸化 還元
Fe2O3 酸化鉄 黄・茶・黒 薄水色・茶・黒 弁柄 1・5・.10
CuO 酸化銅 酸化銅 5
CoO 酸化
コバルト
酸化
コバルト
1
CrO 酸化
クロム
酸化
クロム
2
※外割で加えるには、通常の入力モードで、「外割」チェックをチェックします。
・釉薬作りで用いる原料例
分類ごとの大まかな説明と、よく使われる原料を紹介します。ここであげている原料であれば、入替えてもさほど問題になることはありません。ここで使う用語(分類)は、陶芸業界で標準的なものではなく、「釉薬工房」で使用しているものです。また、ソフト中では、原料を表の色を用いて表示するので、一目で原料の分類がわかります。
分類 役割 主な原料
長石類 釉薬の基本になります。適度な量のアルミナ、シリカを含みます。これを入れない釉薬はほぼないです。単体で釉薬になるものもあります。KNaOを加える役目も果たします。 福島長石
釜戸長石
平津長石
天草陶石
アルミナ中心 アルミナを加えるときに使います。アルミナは、釉薬の糊材の役目を果たします。シリカとのバランスが重要です。 韓国カオリン
シリカ中心 シリカを加えるときに使います。シリカはガラスの原料になります。アルミナとのバランスが重要です。 福島珪石
合成ワラ灰
アルカリ中心 アルカリ分を加えるときに使います。アルカリは、釉薬の溶けや発色に大きく影響します。 合成土灰
赤坂石灰石
炭酸カルシウム
着色剤 釉薬に色を付けます。金属が中心となります。アルカリの分量や種類によって発色は変わってきます。絵具などの顔料はここではなく、その他に含めています。 弁柄
酸化銅
酸化コバルト
酸化クロム
釉薬 釉薬として販売されている粉末に着色剤などを加えても、オリジナルの釉薬を簡単に作ることができます。液体の場合、粉末の分量がわからないので、調合には使いにくいです。 3号透明釉
その他 上記に含まれない原料です。乳濁剤、顔料などはここに含まれます。 珪酸ジルコニウム
骨灰
・既存レシピを改造する
今まで述べた手順だけでも、たくさんの調合をすることができます。それだけでなく、予め本やインターネットなどで入手したレシピを入力し、それを元に改造することも、簡単にできます。実際、1から釉薬を作るのは大変なので、既存のレシピを基に、自分なりの調整をして新たな釉薬を作るとよいでしょう。そんなとき、「釉薬工房」は非常に役立つことと思います。
・もっと深く釉薬を考えるには
この番外編では、とにかく考えずに調合することだけをお話しました、もっといろいろと勉強したいという方は、Vol.1からの連載や書籍を参考にしてください。なお、連載では、この番外と重複した情報も多数あります。
参考文献へ
Vol.01 自分の釉薬を作ろう
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